もっともっと知りたい!『ムーミン谷の彗星』のこと【ムーミン春夏秋冬】

小説『ムーミン谷の彗星』が出版されてから80周年を迎えた2026年、ブログ「ムーミン春夏秋冬」では「『コメット イン ムーミンランド』がもっと楽しくなる基礎知識7選」など、何度かにわたって取り上げてきました。特設サイトもオープン、フィンランドの本国サイトでもたびたび特集が組まれ、その一部は「『ムーミン谷の彗星』のすべて~」その1その2として日本語でお読みいただけます。
今回はそれらに加えて、さらに! 日本ならではの視点で掘り下げ、彗星についてもっともっと詳しくなれるあれこれをご紹介していきたいと思います。

目次
原作小説『ムーミン谷の彗星』を読もう!
最初のムーミン・コミックス『ムーミントロールと地球の終わり』
『イブニング・ニュース』版コミックス『彗星がふってくる日』
新しい絵本『ムーミントロールとすい星がきた日』
テレビシリーズを長編化したパペットアニメ映画
日本の『楽しいムーミン一家』から生まれた世界初の長編映画
耳で聴く音楽と朗読
物語の一部から着想を得た新作アニメ
グッズとイベント最新情報!

原作小説を読もう!

トーベ・ヤンソンは彗星モチーフのお話を、小説コミックスで描いています。まずは小説について、さらっとおさらい。
1946年、フィンランドで『Kometjakten(彗星追跡)』が刊行されました。二度の改訂があり、現在の『ムーミン谷の彗星』は1968年バージョンです。
日本では1964年に翻訳出版、2019年に訳をリフレッシュした新版『ムーミン谷の彗星』が発売。2025年には文庫版も新版に切り替わりましたが、児童向けの青い鳥文庫は現時点では長く親しまれてきた旧版のままです。箔押しの装丁にカードとシールのついたスペシャルな特装版もあります。

ムーミン全集『ムーミン谷の彗星』[新版]
講談社文庫『ムーミン谷の彗星』[新版]
青い鳥文庫『ムーミン谷の彗星』
特装版『ムーミン谷の彗星』[新版]
※講談社文庫と青い鳥文庫の[新装版]は装丁を新しくしたものであり、内容は新版ではなく旧版です。

▷小説は2度も改訂されています。詳しくは→「コメット イン ムーミンランド」がもっと楽しくなる基礎知識7選」
「『ムーミン谷の彗星』のすべて」

最初のムーミン・コミックス

小説版を世に送り出した翌年、1947年にトーベは彗星の物語をみずから漫画化。当時交際していたアトス・ヴィルタネンの勧めで、彼が編集長を務めるフィンランドのスウェーデン語系新聞『ニィ・ティド』のために描きました。
この貴重な作品は日本語でもムーミン・コミックス『ムーミントロールと地球の終わり』(第14巻『ひとりぼっちのムーミン』収録)で読むことができます。

あらすじは、彗星が近づいてムーミン谷に異変が起き、ムーミントロールスニフが天文台に出かける、という小説をなぞったもの。小説の挿絵とよく似たカットもたくさんあります。大きな違いとしてはヘムルヘムレン)の昆虫瓶に閉じ込められていたトフスランとビフスランが旅の仲間になる点が挙げられます。

1年間の予定でスタートしましたが、ムーミンパパが「王党派新聞」を読んでいる描写などが読者の不興を買い、約半年で連載終了。お話の最後は、洞窟に行くのではなく宇宙船みたいな救命ボートにみんなで乗り込んで、ややあっけない終わりを迎えます。

▷コミックスについてもっと詳しく!→「もうひとつのムーミンの原点、コミックスの世界」

『イブニング・ニュース』版のコミックス

1954年からイギリスの大手夕刊紙『イブニング・ニュース』でムーミン・コミックスの連載が始まります。第17話『彗星がふってくる日』は、1958年発表。日本語版はムーミン・コミックス第9『彗星がふってくる日』です。

このシリーズは当初はトーベがストーリーと作画を手がけ、弟のラルスが英訳を手伝っていました。途中からラルスが原案にも加わるようになり、『彗星がふってくる日』は姉弟の共作。

ストーリーは小説と異なり、ムーミンたちは展望台に出かけることはなく、彗星の脅威に右往左往するムーミン谷の住人たちがユーモラスに描かれています。

小説ではムーミントロールとスノークのおじょうさんが劇的な出会いを果たしますが、コミックスでは旧知の仲。スナフキン、トフスランとビフスラン、じゃこうねずみは不在で、小説版には出てこないリトルミイがムーミンたちと行動を共にします。スニフは登場するものの、怪しいお商売に夢中。タコに立ち向かう場面やムーミンママのケーキ、強風を利用して移動するところなど、小説とコミックスを読み比べてみるのも一興です。

原作を元に新しく作られた絵本

原作を元に、子どもたちにも親しめるような絵本も誕生。
「ムーミンのおはなしえほん」シリーズの『ムーミントロールとすい星がきた日』は、小説のストーリーにコミックスの絵を組み合わせた、カラフルで楽しい一冊。2025年、ムーミン小説出版80周年を記念して作られました。

▷『ムーミン谷の彗星』以外にもいろいろあるユニークな新作絵本→ムーミン関連絵本
▷トーベ・ヤンソン自身が描いた絵本→ムーミン絵本

テレビシリーズを長編化したパペットアニメ映画

『ムーミン谷の彗星』が原作のメディアミックス作品にも目を向けてみましょう。

まず、1977年から1982年にかけてポーランドで作られたテレビシリーズ『ムーミン パペットアニメーション』。半立体のパペットをひとこまひとこま動かし、丁寧に撮影したストップモーションアニメです。1話あたり89分で全78話、小説とコミックスのエピソードが両方使われていて、長めの原作は何話かに分けて描くという構成。

『ムーミン谷の彗星』は第4860話の13回にわたって、おおむね原作に沿って映像化されています。独自のアレンジといえば、直前の第47話からのつながりでミイ(リトルミイ)がじゃこうねずみを連れてくる運びになっていたり、スナフキンがすでにシリーズに登場していたので、初めての出会いではなく再会になっていたり。

2010年、そのテレビシリーズから『ムーミン谷の彗星』の部分を集めて再構成、デジタルリマスターを施して、新たに音声とキャラクターボイスを加えた長編映画『劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーション』が誕生。日本では2015年に公開、2025年にもリバイバル上映されました。現在はDVD(生産は終了)や各種配信のほか、Moomin OfficialYouTubeチャンネルで英語版「Moomins and the Comet Chase」を無料で視聴可能です。

ちなみに、同様の手法で『ムーミン谷の夏まつり』『ムーミンパパの思い出』『ムーミン谷とウィンターワンダーランド』も長編映画化されています。

▷アニメ作品については→「昭和から平成、令和へ。ムーミンアニメの歴史」

日本のテレビシリーズ『楽しいムーミン一家』から生まれた世界初の長編映画

1990年代、世界中で大人気を博したテレビシリーズ『楽しいムーミン一家』。トーベとラルスが監修に当たり、アニメーション制作は日本が担当しました。

テレビシリーズ第2期『楽しいムーミン一家 冒険日記』放送中の1992年に作られたのが、世界初のムーミン長編映画『楽しいムーミン一家 ムーミン谷の彗星』です。原作小説に忠実に、ムーミン一家がまだムーミン谷に越してきたばかりで、スナフキンとも初対面という設定ですが、最大のアレンジはミイが天文台への旅に同行する点。小説ではほぼ接点のないミイとスニフの掛け合いが温かな笑いを誘います。わくわくと胸躍る場面がじっくりと描かれ、大人も子どもも楽しめる名作といえるでしょう。

▷この映画は2023年にフィンランドで映像をリフレッシュし、音楽と声優を差し替えた新バージョンとして劇場公開。予告映像や詳細については本国サイトの記事をどうぞ→Muumipeikko ja pyrstötähti -animaatio elokuvateattereihin syyskuussa

耳で聴く、彗星の世界

1992年公開の長編映画『楽しいムーミン一家 ムーミン谷の彗星』で特筆すべきは、フィンランドでも大人気で再評価が高まっている白鳥澄夫さんの音楽と、白鳥英美子さんのオープニングテーマ 「しあわせのモルガーネ」、エンディングテーマ「この宇宙(そら)へ、伝えたい」。この2曲とテレビ版のテーマ曲「夢の世界へ」「遠いあこがれ」は『白鳥英美子ベスト~ミュージック・オブ・ファンタジー』に収録、配信もあります。

白鳥英美子さんといえば昨年に引き続き、今年もムーミンの日スペシャルイベントにご登場予定。魂に響く唯一無二の歌声を生で聴くことのできる貴重なチャンスをどうぞお見逃しなく!

また、もうひとりのゲスト室井滋さんが朗読するオーディオブック『ムーミン谷の彗星』も大好評配信中です。本でお読みになった方も、読書はちょっと苦手という方も、室井さんの声でより広がっていく物語の世界をお楽しみください。

▷『ムーミン谷の彗星』の演劇作品については→「『ムーミン谷の彗星』のすべて その2」
▷バレエについては→「ムーミンバレエ『ムーミン谷の彗星(Comet in Moominland』)」

小説の一部から着想を得た「火の精」

2019年から始まった、フィンランドとイギリスの共同制作による最新テレビアニメシリーズ『ムーミン谷のなかまたち』

シーズン22「火の精」は、小説『ムーミン谷の彗星』でスナフキンがムーミントロールとスニフに語る火を噴く山の短い逸話がベースになっています。

小説では、川に落ちて消えそうになっていたところをスナフキンに助けられた火の精がお礼として火傷を防ぐ地下の油をプレゼント。

アニメでは、彗星の接近ではなく、古い火山が再び動き始めたため、ムーミン谷から引っ越すことに。その場にいないスナフキンの身を案じたムーミントロールが探しに出かけると、スナフキンは川から助けた火の精を火口まで送っていく途中でした。竹馬に乗って移動したり、火傷しない油だったり、共通するディテールはありますが、原作の一部を膨らませたオリジナルの展開です。

シーズン12は日本語版があり、DVDや配信で観ることができます。まん丸な火の精がとても表情豊かでキュートなので、未見の方はぜひご覧になってみてください。
シリーズはシーズン4まで作られていて、シーズン4には『ムーミン谷の彗星』のお話の一部が使われた「Sniff’s Cave」「The Comet in Moominvalley」というエピソードも。日本でも観られるようになるといいですね!

グッズやイベントも!

彗星をモチーフにしたCOMET IN MOOMINLANDシリーズのグッズはどんどんアイテムが多彩になっています。最新情報はMOOMIN SHOPをチェックしてください。

ムーミンバレーパーク「ムーミン谷とアンブレラ」の今年のテーマは彗星で、園内のあちこちに彗星モチーフのオブジェや演出もあります。7月3日(金)からはサマーイベント「ムーミン谷でみずあそび 2026」がスタートしますよ。

そして、2026年のムーミンの日のテーマはもちろん『ムーミン谷の彗星』。物語のなかでスノークのおじょうさんから贈られたメダルを下げた今年限定の特別な装いのムーミントロール撮影タイムがあったり、特典の非売品コンパクトデイリーバッグが彗星の挿絵デザインだったり、彗星の世界をさまざまな形でたっぷりと!

▷ムーミンの日2026の詳細は→ムーミンの日 スペシャルイベント2026
▷チケットと特典グッズ情報は→チケット一般販売中!

7月22日から募集開始の「ムーミンのものがたり 読書感想文・感想画コンテスト」の今年の課題図書は小説『ムーミン谷の彗星』と絵本『ムーミントロールとすい星がきた日』。ぜひ今から読んで(読み返して)ご準備を。

ざっと振り返っただけでも、こんなにもたくさんの『ムーミン谷の彗星』に関する話題があることに改めてびっくり。あなたのお気に入りのフレーズやエピソード、表現が見つかったら、ぜひ周囲の方と話したりSNSでシェアしたりして、もっともっと広めていってくださいねー!

文/萩原まみ(text by Mami Hagiwara