(225)集めること、揃えること、蓄えること【フィンランドムーミン便り】


全国各地で売り切れになったムーミンのフィギュア入りチョコエッグ。
 

写真のチョコエッグは私が知る限りでも20年以上続くイースターの定番商品のひとつ。チョコを割ると中にムーミンのフィギュアが一体入っている。新聞記事にもなっていたのだけれど、今年は中のフィギュアを揃えるために大量に購入した人たちがいたらしい。私はおみくじ感覚で毎年ひとつだけ買っているのだけれど、私がヘムレンさん以外を当てることはほとんどなく、揃えようと考えたこともなかった。

揃えたい人があまりにも多すぎたのか、新聞記事になったからか、私は毎年恒例にしていたムーミンのフィギュア入りチョコエッグを今年は買うことができなかった。少し足をのばして大きなスーパーにも行ったりしたけれど、最後までムーミンのフィギュア入りチョコエッグだけは見つけられなかったのだ。ムーミンの人気には波があるというけれど、今また人気の波が上がっているところなのかもしれない。新聞記事にはスーパーの人のコメントも掲載されていて、今年はいつも以上に売れているということだった。

フィンランドの資産運用はアラビアのムーミンマグを集めることなんていう冗談があるくらい、ムーミンマグのコレクターは多く、実際に400個限定の希少マグは日本円に換算すると200万円ちかくの高値がついている。次はチョコエッグのフィギュアなのか?と思ったけれど、フィギュア自体は普通にお店で買えるものと同じだ。なのになぜチョコエッグだけで揃えようとするのか考えるときりがないのでやめておく。コレクションすることが楽しいのかな、と個人的にはそんな風に想像している。

思えばムーミンの物語にもコレクターたちが登場する。トーベ・ヤンソンの身近なところでは、一番下の弟ラルス・ヤンソンが蝶々のコレクションをしていた。ブレッドシャール島の夏小屋に初めて伺ったとき、いの一番で嬉しそうに見せてくれたのが蝶々の標本で、思わず「こんな身近なところにヘムレンさんがいた!」と思ったものだ。そして私の周囲を見渡しても、実はモノを集めがちな人は多い。集めたり揃えたりするコレクターだけでなく、蓄える人たちも多い。ムーミンママのジュースやジャムの量だって相当ありそうだけれど、フィンランドの貯蔵室を覗くと、何年も前のベリージャムやジュースを見かけることがよくある。

モノを揃えたり集めたりするのは、人それぞれのきっかけがあるだろう。自分の力だけでコレクションする人がいれば(諦めない心が鍛えられそうだ)、友だちや知人のつてを使って(より広い人間関係を築いていくことになりそうだ)、最近ではお金でなんとかなることもある(資産運用が上手くなるのか?)。さらにフィギュアだけなら普通に購入できるのに敢えてチョコエッグにこだわり、そこから出てきたフィギュアで揃えようとしたとなると、揃えることよりも大事なこともあるのだろう。先に「蓄える」話をしたけれど、それは資源に限りのあるフィンランドらしい暮らしから来ているように思う。冬を越すために欠かせないビタミン源が確保できるように、なんて考えて必要以上の量を蓄えておく。または不作の夏のことを考えて備えておく。

この時期はいよいよ始まる夏小屋での生活のために小屋や周辺を掃除し、物置を改めて整理する。そのたびに、不思議なコレクションが出てくるものだ。鳥の羽根、木の皮、石、瓶の蓋あたりは、それこそさっさと手放してもいいはずなのに、こういうものに限って手にとることもせず、そのままにしてしまう。何十年か前の服に急に袖を通してみたり、一度も使われていない昔のキッチンタオルをいまさらながら卸したりする。誰かの蓄えは誰かの新たなコレクションになることもあれば、誰かの日常で新たに息を吹き返したりする。

 

何度やってもヘムレンしか出てこないことだってある
 

森下圭子